運動習慣が形成されていない子どもや、「体育嫌い」「運動嫌い」だった人が、スポーツをはじめとする身体活動に親しみ、運動習慣を身につけるためにはどうしたらよいのでしょうか。
①楽しく体を動かす
体育の授業中に「5分間走り続けましょう」と言われたら、どんな気持ちになるでしょう?楽しそうにイキイキとした表情で走る学生の姿は想像できません。ダルそうに、心から嫌だということがわかる表情で走っている姿は容易に想像できます。走り終わった後、大して汗をかいていなくても、その表情は疲労困憊です。
他方、5分間バスケットボールのゲームをしたらどうでしょう。嫌々やっている人もいますが、多くの人はボールを追い、5分間全力で走り、終わった後は汗をダラダラとかいているのに、気持よさそうな表情です。
このように、ゲーム性を加えることにより、運動は楽しさに動機づけられます。ゲーム性だけでなく、好きな人や、好きな場所、好きな景色など、運動にともなう喜び、あるいは褒め言葉や収穫、望ましい結果などの“ご褒美”も動機づけとなります。
今日では「レクリエーション・スポーツ」、「ニュースポーツ」、「軽スポーツ」、「パラスポーツ」など、年齢や性別、体調あるいは障がいの度合いに合わせた種目を選択することが可能です。散歩やガーデニングなどのように、これまでスポーツとは呼ばれなかった“うっすら汗をかく程度の運動”を含め、数多くの身体活動の中から、自分に合った活動を見つけて、自分のペースで運動を楽しむことが大切です。
②マイナスの要因を減らす
ダイエットはなぜ続かないのでしょうか?
キツイ・辛い・お腹が空く・疲れる・お金がかかる・遠い・嫌いな人がいる・など、様々な理由が考えられます。せっかく運動を始めても、活動中や活動に至る過程で嫌な気持ちになることが繰り返されると、その活動は続かなくなります。気候の良い春や秋に運動を始めた人が、夏や冬にやめてしまうのも同じ理由です。
運動を続けるためには、マイナス要因を極力減らす工夫が必要です。また、ダイエットのように成果が表れるまでに時間を要する「塵も積もれば山となる」タイプの活動に関しては、「頑張っているのに結果が出ない」ということがマイナス要因となるため、『目標値を達成するために毎日1km走る』という下位目標を立て、走った日はカレンダーにシールを張るなど、“塵が積もるたびにご褒美”という方法が有効です。
生活習慣は加齢や環境の変化により少しずつ変化はするものの、努力をして変えようとしてもなかなか変えられないものです。進学や進級など、環境が大きく変わることを切っ掛けに、“望ましい自分”になろうと努力をするケースも見受けられますが、多くの場合“今日の自分”は“昨日までの自分”を踏襲します。歳をとってから新しいことに挑戦し、それがライフワークになるというようなケースについても、幼少期の豊富な経験に起因する「好奇心を持つ」ことや「挑戦をする」という性格に基づく“生活習慣”と考えることができます。「三つ子の魂百まで」ということわざもあるように、幼少期に身に付いた習慣は極めて重要だということです。
『大学生のための体育講義-今日つくる未来・今日を生きる知恵-』:推敲舎(2018)より自著部分を抜粋
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