見ないふりのススメ

  生きるチカラ

 ここ数カ月、幼稚園や保育園で指導をしていて違和感を覚えることが何度となくありました。
保育者が話し始めても、注意を促しても一向に聞く耳を持たない子どもが少なくないのです。

 そんな時、私は「聞いている人~」と全体に投げかけながら自分でも大きく片手を挙げます。
 これまでのパターンでは「は~い!」と手を挙げながら私を見るので、それを機に話し始めました。全く聞いていないのに、周りの子どもに合わせて、「はーい!」と手を挙げる子どももいますが、そんな時には「聞いてた?🤨笑」と軽くツッコミつつ話し始めます。

 それが、今年度はあまり効きません。

 年度が変わった直後には、まだ落ち着いていないのだろうと考えていましたが、違うように思います。私見では、コロナ禍の自粛期間や在宅テレワークが影響しているのではないかと考えています。

 時間に余裕を持つ複数の大人が、過度に子どもに構ってやりたいと考えていたとしたら、見ていなくても、聞いていなくても、自分でやらなくても、自分で考えなくても、更には一言もしゃべらなくても、思った通りにことが運びます。困ることはありません。

 心身の発育・発達において幼児期がとても重要だということは周知のとおりですが、様々な体験を通して身の回りで起きる事象に対しての「当たり前」や「普通」の概念が形成される機会が最も多いのもこの時期だと考えられます。
 「当たり前」だからこそ、それを覆すのは容易なことではありません。何もしないことが「当たり前」になってしまったら、少しでも何かをするのは「たいへんな事」「面倒なこと」になってしまいます。

 全ての子どもが、自分のことを「普通」にやれる人、困ったことがあったら「当たり前」に解決しようと努力をする人になれるよう、大人は、見えても口や手を出さない、褒めることも叱ることもしない。すなわち“見ないふり”です。何もしないで見守ることも大切です。

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