一般的に「リスク」というのは、“被害の影響の大きさ”や“被害が発生する可能性(確率)の組合わせ”です。つまり、「これやったら絶対に大けがするじゃん」や、「これ、下手するとケガするな」と考える余地があるのがリスクです。この場合、前者は高いリスクで、後者は中程度のリスクと言えるでしょう。
他方、「ハザード」という概念があります。日本規格協会(2001)は「ハザード」を「害悪を引き起こす可能性のある原因」と定義しています。こちらは、例を挙げるとしたら”電子レンジで加熱する卵”です。
「ハザード」は、経験値が高ければ予見可能なことが多いように思いますが、人によってはノーリスクと捉えるような事あるいは物と言えるでしょう。
今月12日、長野県の保育園で、6歳の園児が持っていたピンセットが自分の右目のまぶたに刺さるという痛ましい事故がありました。
ピンセットは、飼育していたカエルに餌を与えるための物で、園児はそのピンセットを持ったまま、滑り台を腹ばいで滑っていてケガをしたようです。
ニュースの記事には、ピンセットは職員に断ってから使うルールがあったが、園児の手の届く場所に置かれていたと書かれています。
文面から、ピンセットが園児の手の届く場所に置かれていたということが問題視されているように思います。園児のお祖母様も「ピンセットが置いてなければ」と仰っています。
私も親であり、つい最近、息子が公園で頭部にケガをして救急搬送されたばかりなので、お気持ちは察するに余りあります。なので、同様の事故が起きて欲しくない気持ちは同じですが、使えないようにするのではなく、その危険性をしっかりと伝えることが、より大切だと考えています。園内で使えないようにしても、公園や自宅などで手にする可能性が多分にあるからです。
私は子どもが棒状の物を持って立ち歩いていると、「棒を持って歩かない!」と少し強めに言います。走っていたら大きな声を出します。それでも止まらなければ周囲の子どもが驚くほどの声で怒鳴ることもあります。泣いても構いません。守るためです。
子どもが止まってから、全ての子どもを集め、目や口に刺さる仕草を交えて、いかに危ないかがわかるように教えます。
「この棒が目に刺さったらどうなる?」
「痛い」「ケガしちゃう」「死んじゃう」
「そう。痛いだけじゃなくて、目が見えなくなるかもしれないし、死んじゃうかもしれないよね」
「〇〇ちゃんが死んじゃったら、先生はすごく悲しいから、絶対にやめて」と話すと、子どもは頷きます。
近年、「死」という言葉をタブー視する傾向があるように思いますが、このような場面ではむしろ「死」という言葉の重さを積極的に伝えるべきだと考えます。
これまでに「先生がすごく怒って怖かったと子どもが言っています」とか「怒鳴るのはちょっと。。。」などと言われたことはありません。参観日にも叱っていますし、安全に関しては譲れないことを保護者に向けて発信しているからだと思います。
子どもにとって”棒を持って遊んだら絶対に新戸先生にすごく怒られる“ことがリスクになっても良いと思っています。
本気で守るには、嫌われる覚悟も必要です。
※文献
日本規格協会:リスクマネジメントシステム構築のための指針,JIS Q2001,2001
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