大人と子どもの大きな違いの一つに「意味もなく走る」という行動があります。
幼児は遊ぶときに、行動の先にある結果を意識することなくその瞬間を楽しんでいるため、その瞬間に体を動かしているのであれば、「体を動かすこと」と「楽しさ」がリンクし、その運動自体が好きになります。つまり、子どもは意味もなく走っているのではなく、楽しいから走っているのです。しかし年齢が上がるにつれ、行動の先にある結果の影響が大きくなるため、「好きな種目」や「好きな動き」のように、楽しいと感じる運動は自ずと限定されます。したがって、児童期以降の運動習慣を自然に身につけるためには、幼児期にたくさん運動遊びをすることが必要だといえます。運動習慣を身につけ継続することは、体力や運動能力の向上だけではなく、成人期以降の生活習慣病をはじめとする疾病予防につながり、更には老年期の認知症予防や健康維持へとつながります。
また、ケンカなどのトラブルを含め、子どもは遊びを通して、体力、運動能力の他、社会性や協調性、想像力、危機管理能力など、日常生活や社会生活をはじめとする様々な活動に必要な能力を獲得します。自分勝手な振る舞いをすれば仲間外れにされ、「もうやらない」と約束することで仲間に戻ることができます。仲の良い友達とケンカをすれば心が痛み、勇気を出して仲直りをすれば心が晴れ、それができなければモヤモヤした気持ちが残ります。また、小さなケガやヒヤリハットの積み重ね、刃物で指先を切った時の痛みなどの記憶は、 大ケガや重大な事故に繋がる行動を抑制します。
『大学生のための体育講義-今日つくる未来・今日を生きる知恵-』:推敲舎(2018)より自著部分を抜粋
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